タスク管理ノウハウ2025年11月14日

カンバン方式がうまくいかない原因5つと対策｜タスクが流れない理由を解説

タスク管理ツール比較Lab

タスク管理の定番であるカンバン方式は、本来とてもシンプルで強力な手法です。

付箋を貼り替えるようにしてタスクを視覚化し、流れるように進めていく。

だが、シンプルだからこそ設計や運用の小さなズレが露呈しやすく、うまく動かないチームも多いのが事実です。

この記事では、カンバン方式が機能しない典型的な原因5つを挙げ、それぞれに対する実践的な対策を提示します。

最後に現場で効果が出た改善例も紹介しますので、今のボード運用にすぐ取り入れてください。

カンバン方式がうまくいかないときに見られる兆候

まず、現場で「うまくいってない」と感じる典型的なサインを整理します。

タスクが「Doing」列で長期間停滞している。
ボードの情報が古く、誰も参照しなくなっている。
「次に誰が動くか」が曖昧でアクションが進まない。
タスクの粒度がバラバラで進捗が見えにくい。
ボードの設計が業務フローと合っていない。

こうしたサインを放置すると、結局チームはエクセルやチャットに戻り、カンバンのメリットは失われます。

では、なぜこれらが起きるのか。以下で主要な原因を5つに分けて詳述します。

原因①：タスクの粒度がバラバラで進捗を判断できない

大きすぎるタスクと、小さすぎるタスクが混在していると、ボードの流れは乱れます。

たとえば「サイト制作」と「バナー1枚修正」を同列に並べると、後者は次々流れる一方で前者は数週間止まってしまう。結果、「タスクがいつ終わるのか」分かりにくくなるのです。

対策

タスクは 1〜2日で完了する最小単位 に分解する。
各カードに「完了条件」を明確に記載する（例：「トップページのファーストビュー画像差し替え＋確認メール送付」）。
タスク分解のテンプレートを用意して、メンバー間で粒度を揃える。

実践ヒント：初めは過分解でも構いません。流れができれば自然と統合できる場面が見えてきます。

原因②：ボードの列（ステージ）がチームの業務フローに合っていない

「ToDo／Doing／Done」だけが万能だと思い込むのは危険です。各業務には特有のステップがあります。

例えばデザインは「デザイン中→内部確認→クライアント確認→修正→納品」と細かく分けるのが自然です。

一方、営業なら「リード→商談→提案→契約」といった流れが適切でしょう。

対策

現状の業務フローを書き出して、実際に動いている順序で列を作り直す。
無理に列を増やしすぎず、3〜6列程度の分かりやすい構成を目安にする。
列名は現場の言葉で命名し、直感的に分かる表現にする（社内用語は避ける）。

実践ヒント：一度作って終わりではなく、2週間ごとに列構成の見直しを行うと定着しやすいです。

原因③：WIP（仕掛かり）制限が機能していない

やりかけのタスクが多いと、どれもが中途半端になりがちです。

カンバンのコア概念の一つは“WIPを制限して完成に集中する”こと。WIPが守られないと、チームのスループット（完了率）は下がります。

対策

チームまたは個人ごとに 進行中タスクの上限 を設定する（例：1人当たり2件まで）。
WIP超過が起きている場合は、立ち止まってレビューしてボトルネックを洗い出す。
「誰が詰まらせているか」を責めるのではなく、プロセスの問題として議論する文化を作る。

実践ヒント：最初は厳しめに設定し、安定してきたら緩めていくほうが効果的です。

原因④：「次に誰が動くか」が曖昧になっている

カードに担当は付いていても、「次に動く人」「次アクション」が明示されていないと、停滞が生まれます。

特に「確認待ち」や「レビュー待ち」の状態は放置されやすいです。

対策

各カードに「次に何をするか」「次に動く人」を必ず記載する。
担当者が複数いる場合は、責任者（主担当）を明確にし、レビュー担当などの役割を補足する。
「確認待ち」列には期限を設定し、期限超過が見えたらアラートを出す運用にする。

実践ヒント：カードに簡単なチェックリストを入れると、誰が何をやれば次に進むかが一目で分かります。

原因⑤：更新や確認の習慣が定着していない

ツールは使われてこそ価値があります。

最初は盛り上がって更新されても、日常業務で忙しくなると更新が止まりがち。ボードが古くなると“信頼できない情報源”になり、再びチャットや口頭報告に戻ってしまいます。

対策

毎朝5分、短いスタンドアップでボードの更新を義務化する（ただし報告会ではなく「動かす」時間にする）。
月次や週次でボードのレビュー（不要カードの削除や列再編）を行う。
更新のハードルを下げるために、モバイルで簡単にカードを動かせるツールを採用する。

実践ヒント：最初の2〜3週間は「更新忘れペナルティ」などのルールで習慣化を促すのも手です（罰ではなくリマインドを推奨）。

原因別まとめと優先順位付き対策プラン

すべてを一度に直すのは大変です。優先度の目安を示します。

高優先度（すぐやるべき）

タスクの粒度を揃える（分解テンプレを導入）
「次に誰が動くか」をカードに明記する

中優先度（短期間で改善）

3. WIP制限を設定する
4. ボード列を業務フローに合わせて調整する

低優先度（継続的改善）

5. 更新習慣を定着させる（朝の5分スタンドアップ）

実際に改善したチームの事例

事例A（Web制作チーム）

課題	デザイナーのタスクがDoingで止まり、納期遅延が頻発。
対応	タスクを「設計→デザイン→内部レビュー→クライアント確認→納品」に細分化し、WIPを1人2件に設定。
結果	2週間で停滞が半減し、納期遵守率が向上した。

事例B（開発チーム）

課題	テスト待ちが長引き、リリースが遅延。
対応	カードに「次に動く人」と「次アクション」を必須項目にし、レビュー担当を明確化。
結果	レビュー待ち時間が短縮され、スループットが1.4倍に改善。

事例C（少人数スタートアップ）

課題	複数プロジェクトでタスクが混在し、優先度が不明瞭。
対応	案件ごとの色分け＋全体ボードで優先順位を可視化。Pitboardのような「動きで見せる」ツールに変更。
結果	チームの意思決定が速くなり、無駄な切り替えが減った。